ホラー漫画の始まりは貸本時代の1950年?
三日月堂では映画のポスターをはじめとする多くの趣味・コレクション品を
取り扱っておりますが、様々な映画・ゲーム・小説などの各分野において必ずといって
いいほどのマニア層が存在するのが、ホラージャンルのコレクション。
それは漫画においても例外ではなく、1950年代頃から1990年代にかけて
発達したホラー漫画ジャンルは、90年代以降急速に数を減らしましたが
30年以上経過した2020年代において昭和の過激だったホラー漫画は
再評価されている傾向にあり、コレクターの間で高値で取引がされております。
そしてホラー漫画の全盛期は貸本時代・単行本(コミックス)時代・雑誌時代に
分ける事ができ、その中で最も古く、後に繋がるホラー漫画ブームの土台を作ったのは
多くの怪奇漫画やミステリー漫画が世に送り出された貸本時代であると言われております。
そもそも貸本とは江戸時代から続く本をレンタルする文化で、
戦後の物資の不足した時代において急速に発展、1950年代には貸本漫画産業は
ピークを迎え、1960年代半ばころから徐々にその姿を減らしました。
貸本時代のホラー漫画を知る人によると、その時のホラー漫画は編集が入らずに
漫画家が自由に描いていた分、実験的であったり猟奇的・恐怖表現に際限がなく
後の子供向けに作られたホラー漫画よりも怖かったという話も多く、
この時代にノウハウを身に着けた作家や出版社が、1960年代以降にホラー漫画の
一時代を築く事となるため、貸本時代はまさにホラー漫画の黎明期と言っても過言ではありません。
それでは本日はそんなホラー漫画の買取事例の中でも、
当店で特に珍しかった買取事例をご紹介致します。
山梨県より角川書店「ザ・ホラー」や浜慎二・日野日出志単行本などを買取致しました
こちらは山梨県のお客様よりご依頼頂きました、
角川書店「ザ・ホラー」ほか、ホラー漫画50点の買取のご依頼です。
今回お客様より「家に読まなくなった漫画があり、ジャンルはホラーが中心です。
可能であれば出張買取でお願いしたいと思っております。」とのご依頼を頂きまして、
早速当店スタッフがご自宅までお伺いさせて頂く事となりました。
ご自宅に到着後詳しいお話をお聞きしますと、コンビニコミックなどを中心に30点ほどを
買取をお願いしたく、中でもお気に入りは角川書店の「ザ・ホラー」との事で、
中々気が進まなかったものの、家の整理の為に当店をご利用頂く決意をした
といった旨をお話頂きました。
お伺いしたスタッフがたまたま同じく「ザ・ホラー」が好きで古本屋などで見かけると
思わず買ってしまっていた思い出があるとお話を致しますと、そこから思いのほか
話が盛り上がってしまい、しばし好きなホラー漫画作家について語り合うという
嬉しい時間を過ごしてしまいました。
そしてスタッフが日野日出志先生が好きと言った途端、ご依頼者様の目の色が
変わったと思いきや「あります…」と一言。なんと今回のご依頼品の中に日野日出志先生の
作品が何篇も含まれているらしく、見つけたスタッフは声を上げておりました。
さらにご依頼者様は「これだけじゃないです。」と言うとふらっと部屋から出てしまい、
戻ってきたその手には何と日野日出志先生の1980年代の作品が…!
ご依頼者様曰く、これだけホラー漫画に造詣が深いスタッフとは思っておらず
それだったら「いつかは売らねば…!」と思っていた単行本類も今回まとめて
お願いしたいとの事でした。
最終的に今回ご依頼頂きまして主なホラー漫画は下記の通りとなりました。
・角川書店「ザ・ホラー」2000年代中心 12点
・日野日出志 ホラー漫画 11点
・浜慎二 ホラー漫画 11点
・「ほんとうにあった怖い話」「ホラーMプチ」ほか 16点
ご依頼頂いた「ザ・ホラー」は犬木加奈子先生や日野日出志先生・
まつざきあけみ先生・お茶漬け海苔先生・谷間夢路先生・千之ナイフ先生を
はじめとする人気ホラー漫画作家が揃った需要の高いものとなっており、
さらに今回追加でご依頼頂きました日野日出志先生と浜慎二先生の単行本は
1980年代のレモンコミックス・ひばり書房・秋田書店などのファン垂涎の
稀少性の高いものとなっておりました。
今回貸本時代からご活躍されている日野日出志先生や浜慎二先生の
希少な単行本があったことや、1990年代以降に活躍された人気ホラー漫画作家が
多く掲載されている「ザ・ホラー」をまとめて12点ご依頼頂いた事を踏まえまして、
通常よりも査定額を大きく頑張らせて頂きました。
元祖ホラー漫画とは?ホラー漫画のルーツについて
戦後の貸本時代のホラー漫画については不明瞭な部分が多く、
どのジャンルでも進んで記録を残す「元祖(ホラー漫画)」についても現在に至るまでに
「これだ!」というものは明文化されていないようです。
それはホラー漫画と他ジャンルの漫画の線引きが難しく、ホラー漫画というものは
「時代怪奇物」と「探偵怪奇物」を源流としそこから派生したものであるからと推察されています。
しかしあえて元祖ホラー漫画を挙げるとするのであればという問いに対して、多くのファンは
手塚治虫の「ロストワールド」の名前を挙げており、貸本時代には「古賀しんさく」名義で活動し
後に「エコエコアザラク」などの時代を代表するホラー漫画を手掛ける事となる古賀新一氏も、
「ロストワールド」の影響により漫画家となった事からも、手塚治虫氏の影響力は大きいと言えるでしょう。
しかし手塚治虫氏は皆さまご存知の通りSF・少女漫画・ファンタジー・ミステリー・医療・歴史など
幅広い漫画ジャンルを手掛けており、氏のSF・ホラー・ミステリー・サスペンスもその断片にすぎず
ホラーの一大ムーブメントを作ったかと言われれば判断が難しいところとなっております。
そういった意味ではこの貸本時代には松本零士先生・ちばてつや先生・横山光輝先生・
さいとうたかを先生・石森章太郎先生など後の有名作家陣も怪奇漫画の類を執筆しておりますが、
石ノ森章太郎先生を除きホラー漫画の専門と呼べる先生はこの時代には出ておりませんでした。
少女漫画怪奇ホラーの誕生
1952年頃から数を増やした「時代怪奇物」は伝記浪漫要素やチャンバラ要素が強く、
一方で「探偵怪奇物」は謎解き中心のミステリー物が多かったそうで、
さらにその合間に有名作家陣を筆頭に各漫画家達が出していた短編の怪奇物は
大きなブームとはならないものの、その水面下で人気が出始め2つの潮流を生み出します。
まずひとつが楳図かずお氏を筆頭とする少女向け漫画によるホラー作品の連載。
これは「少女クラブ」をはじめとする少女漫画雑誌の増刊号などで
怪奇漫画ジャンルが徐々に人気を博した事を受けて、当時の少女漫画雑誌が
1958年頃に「かなしい、こわい、ゆかい」の三本柱を掲げた事から始まりました。
そうした中で楳図かずお氏は集英社「少女ブック」の増刊号に「雪おんな」「お百度少女」
といった短編を発表、以降少女怪奇漫画を次々と手掛けていき
1965年には「週刊少女フレンド」の「ねこ目の少女」「へび女」にて人気が爆発し、
少女ホラー漫画の最前線を走る事となります。
1958年以降、貸本少女漫画短編集「花」や「虹」「たのしい五年生」においても
次々と少女怪奇ホラー漫画短編が掲載された事からも、怪奇ホラーの萌芽は
この時点であると言えるでしょう。
業界初の怪奇漫画専門誌の登場
そして少女漫画雑誌が「かなしい、こわい、ゆかい」と三本柱の一つにホラーを
掲げた1958年、貸本業界には「怪談」という業界初の怪奇漫画専門誌が
つばめ出版より創刊され、怪奇漫画がようやく一大ジャンルとして確立される事となります。
これがいわゆる貸本時代のホラー漫画の筆頭で、創刊当時の作家陣には
古賀しんさく(古賀新一)先生・サツキ貫太先生・小島剛夕先生ら、
そして今回のご依頼品の中にもございました浜慎二先生の名前も…。
この「怪談」以降、1960年代にかけて怪奇漫画は爆発的に数を増やし、
ひばり書房(つばめ出版の兄弟会社)からは「オール怪談」が創刊されると「怪談」と「オール怪談」は
怪奇漫画の二大巨頭となり、それに続くように「怪談特集」「妖剣」「怪奇入門」「怪奇マガジン」
「黒のマガジン」といった怪奇漫画シリーズが展開されました。
また、時代を同じくして水木しげる先生も兎月書房よりデビューを果たし
デビュー当初から怪奇漫画を手掛けておりましたが、「グロテスクすぎる」「泥臭い」
といった理由や当時の貸本の主流がハードボイルド・アクション活劇だったこともあり、
黎明期からの怪奇漫画活動であるにも関わらず長らく脚光を浴びる事の
ない時代が続いた事も見逃すことは出来ません。
貸本時代に怪奇ホラー漫画を手掛けた出版社や作家について
貸本漫画時代に怪奇漫画を多く手掛けた出版社には
つばめ出版・ひばり書房・曙出版・東京トップ社・東京漫画出版社・東考社・
若木書房・太平洋文庫・曙出版・文華書房・宏文堂・セントラル文庫・
日の丸文庫・金竜出版社・文洋社・佐藤プロ・青林堂・兎月書房などがあり、
中でもつばめ出版の「怪談」とひばり書房の「オール怪談」は入手が困難かつ、
とても人気が高くなっております。
作家には、楳図かずお・古賀しんさく(新一)・さがみゆき・徳南晴一郎・浜慎二・
日野日出志・水木しげる・小島剛夕・サツキ貫太・桜井昌一・佐藤まさあき・
つげ義春・月宮美兎・渡辺美千太郎・橋本将治(白丸健二)・南あかね・
松野たけし・小山葉子・浦きよみ・好美のぼる・江戸川きよし・いばら美喜・
辰巳ヨシヒロ・松下哲也・菅島茂・松下哲也などの先生方がおり、
貸本自体のが市場に出回らない事も相まって、貸本時代の先生方の作品は
どれも希少性・市場需要共に高くなっております。
高額買取となる貸本をご紹介
・ひばり書房「オール怪談」
・つばめ出版「怪談」
曙出版の高額買取となるホラー漫画・貸本をご紹介
・曙出版(文華書房)「墓をほる男」水木しげる
・曙出版(文華書房)「怪奇鮮血の目」水木しげる
・曙出版(文華書房)「地底の足音」水木しげる
・曙出版「叫ぶ棺」原やすみ
・曙出版「妖霊島 怪談平家物語」白川まり奈
・曙出版「ネズミ娘」好美のぼる
・曙出版「続吸血伝」白川まり奈
・曙出版「人喰い円盤」白川まり奈
・曙出版「吸血伝 吸血狩り」白川まり奈
東京漫画出版社の高額買取となるホラー漫画・貸本をご紹介
・東京漫画出版社「毒の笑顔」谷ゆきお
・東京漫画出版社「縮んだ手」谷ゆきお
・東京漫画出版社「悪たれ呪術」谷ゆきお
・東京漫画出版社「亡魂の沼」谷ゆきお
・東京漫画出版社「夜泣き真珠」谷ゆきお
・東京漫画出版社「怪談 猫の爪」好美のぼる
・東京漫画出版社「少女 白髪鬼」好美のぼる
・東京漫画出版社「吸血蜘蛛」望月みさお
・東京漫画出版社「亡霊婆」望月みさお
・東京漫画出版社「猫目が妖しく光る」望月みさお
・東京漫画出版社「化け猫先生」望月みさお
東京トップ社の高額買取となるホラー漫画・貸本をご紹介
・東京トップ社「人形少女」楳図かずお
・東京トップ社「どくろの奇蹟」西たけろう
・東京トップ社「聖少女の裂けた顔」西たけろう
・東京トップ社「魔女ゴーゴンの墓場」西たけろう
・東京トップ社「片目部落」谷ゆきお
・東京トップ社「狂った茶碗」谷ゆきお
・東京トップ社「血いろの蛾」谷ゆきお
・東京トップ社「墓守幸子」池川伸治
日野日出志・浜慎二・貸本をはじめとするホラー漫画の買取は当店へ
三日月堂では、「怪談」「オール怪談」をはじめとする
つばめ出版・ひばり書房・曙出版・東京トップ社・東京漫画出版社など
1950年~1960年代の人気出版社の貸本や、
楳図かずお・古賀しんさく(新一)・さがみゆき・徳南晴一郎・浜慎二・
日野日出志・水木しげる・小島剛夕・サツキ貫太・桜井昌一・佐藤まさあき・
つげ義春・月宮美兎・渡辺美千太郎など人気作家が手掛ける
ホラー漫画(怪奇漫画)を高値で買取しております。
貸本は通常の書籍とは異なり専門性が非常に高く、査定の際に高度な知識や
査定経験・市場に買取事例がない場合の対応力などが求められるため、
専門店でない買取サイト様ですと、貸本の持つ希少性の高さや市場需要が分からずに
せっかくのコレクションが想像よりも安い金額での査定となってしまうというケースも珍しくありません。
三日月堂は古書組合加盟により市場価格に精通しており、
市場相場に沿った適切な評価はもちろんのこと、他店に負けない高価買取や、
あらゆるジャンルに精通した専門スタッフによるお客様に寄り添った買取を実現し
買取事例の少ない見極めにコツがいる商品の正当な評価、
作品ごとに需要の異なる貸本のような専門性の高い商品についての高価買取金額についても
ホラー漫画や貸本に精通した長年の査定経験を持つ副店主が自信を持って買取させて頂きます。
長野県、群馬県、新潟県、富山県、岐阜県、愛知県、静岡県、山梨県、埼玉県、
東京都、神奈川県などの長野県近郊は出張買取を行っており、北は北海道から南は沖縄県まで
全国からの買取実績もある着払いによる宅配買取も承っております。
日野日出志・浜慎二をはじめとする貸本やホラー漫画の買取は当店におまかせ下さい!